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就活をはじめた学生に、キャリアセンターや一般的な就活本が最初にやるべきことにあげるのが〝自己分析〟です。きっちりと自己分析をしたうえで〝自分の軸をつくる〟ことが重要だと説いています。


■自己分析は時間のムダ
多くの大学のキャリアセンターでは、様々なキャリアの方を就活の講師として招き、学生向けの自己分析講座を開設しています。そのニーズも高まっていると聞きます。
自己分析とは、過去の経験から価値観などを整理し、志向タイプをはっきりさせ、自分の強みや弱みを明確にしながら〝自分自身の軸〟を発見することです。

就活をはじめるまでに、自分自身を見つめ直す機会があまりない学生にとって、自己分析をする作業は新鮮なことなのかもしれません。エントリーシートに記入する『自己PRに強みがある学生は有利だ』といわれていますから、自己分析に真剣に取り組む学生は大勢いるでしょう。
しかし、「企業の採用と学生の就活」の双方にたずさわった私の経験から言うと、学生が自己分析することに力を注いでも、就活でほとんど意味がありません。

学生が真剣に取り組んだ自己分析が、ほかの学生と一線を画するほどのオリジナリティに溢れていることはまずないからです。有名な大会で成果を残しているなど、誰もが実績として認めて数値化できるようなものでない限り、企業にとって学生の経験や実績は魅力的ではないのです。

中途半端な自己分析は、プラスになりません。
むしろ『自己分析することで見つけた強み部分=企業面接で評価に値する実績』という思い込みは、独りよがりの誇大妄想になりかねないからです。

どんなに魅力的な外見の持ち主であっても、「僕はイケメンでカッコイです。人気のある某芸能人にも似ているといわれます」と話す人に、好感を持つ人はいないでしょう。高慢さが鼻につくはずです。自己分析をして、自分の強みを抽出することは、このような勘違いを生み出す危険性もはらんでいます。

エントリーシートに記入するアピールポイントになりそうな経験や実績がないなら、「私は学生の頃は、サークル活動やアルバイトに没頭して、勉強もほとんどしませんでした。今後は悔い改めて、社会に出たら人の役に立てるようになりたいと思います」と謙虚な姿勢を打ちだしたほうが、好感度ははるかにアップします。


■企業にエントリーする意味
中途採用では仕事のキャリアが大きな要素になりますが、新卒採用は決め手となる要素を学歴に求めざるを得ません。ところが企業は学歴偏重である事実を明らかにはしません。

企業にとって採用活動とは、優秀な新卒社員を採用する場であると同時に、企業のブランディングのためのマーケティング活動でもあるからです。特に、最終消費財といわれる一般消費者向け商品を扱っている企業にとっては、学生は選考対象であると同時に、大切なお客様です。

例えば就職情報サイトは、採用する企業側で大学別にエントリー率を調整することが可能です。有名大学のエントリー率を高めておけば、必然的に有名大学の学生を中心とした母集団が形成されることになります。学校名不問のオープンエントリーをうたう企業も増えていますが、氏名、住所、電話番号、学科などの一部の情報から大学名を特定することも可能です。

就職情報サイトは、企業が掲載料を支払って登録し、その対価として学生を自社にエントリーするように誘導するサービスです。企業の実態を伝えることや、学生が欲している情報を伝えることを目的としているわけではありませんから、企業と学生の健全なマッチングを取り持つサービスではありません。

だからエントリーシートは業種別に数バージョンを用意して、基本は企業名を変えるだけで使用可能なコピペエントリーシートで充分なわけです。私が、多くの就活講座やセミナーで「就活のエントリーシートはコピペで充分」と訴えるのにはこのような理由があるからです。


■読者への示唆
冒頭で、自己分析が時間のムダであることを申し上げました。自己分析をすることによる最大の問題点は、『自分は何者かを探し求める』あまりに、自分をひとつの型にはめてしまうことにあります。

たとえば、事業で成功して社会的に地位のある人でも、自己分析ができていない人はいます。自分の軸がない人もいます。それ自体は悪いことではありません。軸を持たずに、自分のやりたいことや思考を目まぐるしく変化させるのは、世相や時代環境にあわせて変化していく柔軟な思考力を持っているということです。就活の限られた大事な時間を自己分析に費やすよりも、他にやるべき大切なことに費やすほうが賢明です。


【参考記事】


尾藤克之 経営コンサルタント